名曲に出会って 1「七里ケ浜の哀歌」(真白き富士の嶺)

童謡、唱歌、愛唱歌の仕事のときはいつもは私が曲を選んで、解説も交えながら一緒に歌っていくのだが、時々「いま、今日歌いたいと思う曲」を紙に書いていただいて、そのリクエストの中から歌っていく日を設けている。
【歌詞入り】弾き歌い動画YouTube(6番までフルコーラス歌っています)
「七里ヶ浜の哀歌」の楽譜・歌詞が載っている本のご紹介↓


 
その中に「七里ケ浜の哀歌」という文字を見つけると少し「困ったなあ…..」という気持ちになるのだ。
それは「最後迄泣かずに歌えるであろうか?」という心配だ。

七里ケ浜で実際に起こったボートの事件を歌ったもので、歌詞の中には、その子を想う親の気持ちが綴られており、涙無しには歌えない。
美しい旋律は八分の六拍子でこの旋律は日本の作曲家が書いたものではない。
インガルスというアメリカの作曲家が書いたもので、1890年(明治23年)に刊行された「明治唱歌」の中で「夢の外」という題名で、現在の「七里ケ浜の哀歌」ではなく、他の歌詞で採用されたそう。
その後、三角錫子(みすみすずこ)作詞の歌詞がつけられ「七里ケ浜の哀歌」または、歌い出しの「真白き富士の嶺(ね)」または「真白き富士の根」という名前で呼ばれた曲だ。

明治43年に神奈川県の七里ケ浜沖で逗子開成中学のボートに乗った12人の生徒全員が亡くなるという事故があった。
その事故を悼んで鎮魂歌として書かれた歌詞である。

歌詞の一部を少し載せてみます

み霊(みたま)よ何処に(いずこ)迷いておわすか
帰れ早く 母の胸

黄金も宝も何しに集めん 神よ早く我も召せよ

悲しさあまりて 寝られぬ枕に響く波の音も高し・・・・

歌詞は6番迄あり、涙無しでは歌えない歌のひとつだ。
旋律は長調でそんなに悲しいメロディーではない。でも、 どうしても涙が止まらなくなる、そんな歌だ。

歌詞の持つ力が非常に大きいと感じる。

日本の懐かしい歌の中には、言葉が難しくてすぐには意味がわかりにくいものもあるが、この曲は歌うと同時に歌詞の意味も理解できる。

また、もとは外国の曲で、それに日本の歌詞がつけられているわけだが、歌詞付けで悩むことはない。歌いやすいと思います。

名曲は旋律はもちろん素晴らしいのだが、
特に歌詞が心の中にスッと入ってくる。
幼い頃の思い出や風景、日本の自然の豊かさ、そして日本語の美しさが学べるという日本の財産ではないかと思う。

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