ベートーベンの第九交響曲の「合唱」を練習するのはまずはそれぞれのパートに分かれて。
ソプラノ、アルト、テノール、ベースと四つの部屋に分かれ、それぞれ指導の先生、ピアノの先生がついて
ディクション(読み)や発声、それから自分のパートの音をどんどん歌っておぼえていく。

その次に女声パート、男声パートと二つに分かれる。そのあとやっとみんなで、全員で集まって歌ってみる。

一つのパートが数十人、全体では百数十人になるということで「密」は避けられない。
なにしろこんなことははじめてで、歌うどころか集まることすらできない。
苦渋の決断でしたが岡山の「第九」は中止となりました。
それを決めたのが5月の連休のすぐ後でした。帰りに恐る恐る喫茶店に入ってコーヒーを飲んで帰ったのを思い出します。

今まで一緒に歌ってきた人からはメールや電話でご連絡がかなりありました。「悲しい」「寂しい」
「そうなるとは予測はしてたけどショック・・・・」などです。最近では「歌と離れるかんじがつらい」というメッセージも。たしかに毎年秋から冬を一緒に過ごしていたのでそれが生活の柱にもなっていましたものね。

「第九」の合唱部分を歌うのはとてもとても難しいです。言葉もドイツ語で難しいのですが
それよりも声を出す上でのテクニックが必要でとても難易度が高いです。

全部をきちんと一人で歌えるか?自信を持って歌えているか?と言われると
それは「みんなで歌うからなんとかなっている」のは間違いないような気がします。

人の声の重なり、練習を重ねてきたその経過、
普段は一緒に歌うことなどないオーケストラの伴奏。
そういう経験や本番を迎えるまでの気持ちの高揚などが忘れられない。
そして、やっぱり「参加したらまたあの人に会えるかな?」という気持ち。
いつも一緒にはいないけど、この期間だけ一緒に毎週歌う、
そしてまたそれぞれの生活に戻っていくということが魅力のひとつなのでしょう。

第九の大ファンの人たちは全国へ歌いに行きます。そこでもまた輪がひろがる。楽しそうです。


来年はどうかな?来年もひょっとしたらまだ難しいかもしれませんね。
今年開催されるところはあるのかどうかわかりませんが(かなり中止になっていますね)いつか安心して歌える時を楽しみに今はじっくり待ちたいと思います。

この記事を書いた人

吉井 江里

岡山市で活動している吉井江里です♪合唱指揮、ピアノを弾きながらの歌の講座や合唱指導、講演やライブ等の活動中。2015年3月18日完成の映画「見えないから見えたもの」(盲目の教師、竹内昌彦先生の映画)挿入歌「点字のラブレター」や「ワルツ」を作曲。